“ヤツらを脅かして、ショックを与えて、パニクらせてあげる”と、エミネムとのデュエット「ロマンズ・リヴェンジ」で自慢げに言うニッキー・ミナージュだが、この唯一無二のMCを聴いたことがある人なら誰でも、彼女がふざけているわけではないとわかるだろう。ミックス・テープやゲスト参加によって彼女は大物となり、“トンカ”、“ウィリー・ウォンカ”、“スリランカ”と韻を踏んで、カニエの「モンスター」を完全に自分のものにした。今年最も期待されたヒップ・ホップのデビュー作である『ピンク・フライデー』で、彼女はすでにスーパー・スターの暮らしについてラップし、傑出した冒頭の「アイム・ザ・ベスト」で、「どこにワールド・ツアーに行こうかしら?」と思い悩む。
『フライデー』は驚くほどポップで、「モンスター」での客演ほど印象的な奇抜さは見当たらない。その代わり、ミナージュはリアーナのようなクロスオーヴァー的アプローチを狙い、エレクトロに乗せてR&Bのコーラスを歌い、彼女の淫らさを抑えている。リアーナ自身も「フライ」にゲスト参加し、ナターシャ・ベディングフィールドは「ラスト・チャンス」で娼婦を称える。「ブレイジン」はカニエとの再戦だが、今回は彼のほうが最高のラインを歌っている。
ラジオは「セイヴ・ミー」のような面白味のないバラードを選ぶだろうが、ヒップ・ホップ・トラックのほうがミナージュのズバ抜けた個性を示すものであり、それこそが彼女を一流のスターにしているのだ。彼女が言うように“ニッキーのファンじゃないの? だとしたら間抜けなビッチ”だ。