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R指定』/『Graffiti | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

R指定』/『Graffiti

 シビアな雰囲気の白黒のジャケットにはスターの顔が写っている。右目は手で覆われ、隈どりのようなアイシャドーを施した左目はこちらを睨みつけている。このジャケットを見ると、2009年2月、元交際相手のクリス・ブラウンに殴打された直後のリアーナの、アザのある顔を思い出さずにはいられない。最近まで彼女は事件に関して沈黙を守ってきた。彼女は自分の言い分を語るために、スタジオに籠もっていたのだ。
 偶然のいたずらか、はたまたレコード会社による意図的なものなのか、クリス・ブラウンの新作も、元彼女と同じタイミングで届いた。ブラウンが精彩に欠けたアルバムを出してきたのに対し、リアーナは音の方向性を変え、年間ベスト・ポップ・アルバムといっても過言ではない作品を完成させた。
 ブラウンは無視するにはあまりにも大きすぎる例の件には触れず、クラブ受けする元気なダンス・ポップ・ビートと色男風のポーズを繰り広げている。車と女について歌ってはご満悦の様子で、エクスタシーを約束する(“きみを花のように咲かせるよ”と「Take My Time」で女性に囁きかける)。
 リアーナの作品にも明るくアップテンポな曲がある(スターゲイトのプロデュースによる「ルード・ボーイ」は、カリビアンのビートに乗せた淫らで楽しい曲)。とはいえ、アルバムのテーマはあくまでダーク。ひどく破綻した恋愛だ。“あなたの愛はルール違反だった”とリアーナは「コールド・ケース・ラヴ」で歌う。また別の曲では復讐に燃える。“終わった後は、銃鉄を舐める”と彼女は「G4L」で叫ぶ。“リベンジとは甘いもの”と。陰のある悲痛なマイナー・コードの曲に、シンセとアップリフティングなビートが絡む。ゴスR&Bの誕生だ。
07年のメガ・ヒット曲「アンブレラ」のような派手さのある曲はひとつもない。だが、もっさりとしたパワー・バラードにさえもリスナーと歌手とを繋ぐ親密さが宿っている。「ストゥーピッド・イン・ラヴ」で彼女は自分を批判する。“私の新しいニックネームはバカな女ね……友達も言ってるわ”。このような内省においてリアーナはブラウンを凌駕している。それに対して、「Lucky Me」でブラウンはトラブルを自分の手柄のようにすり替える。“もし僕の世界が崩れ落ちたとしても、僕は微笑みを浮かべる”。シンプルな謝罪のほうがマシな曲になっただろう。少なくとも、彼をまともな人間に見せたはずだ。

『R指定』/リアーナ
  ユニバーサル
☆☆☆☆

『Graffiti』/クリス・ブラウン
  Jive(輸入盤)
☆☆1/2

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